TIBET2000 Day4_2 風の峠
	ラサを出て少し走ると突然景色が変わる。アスファルトは途切れ、あれほど近代的だった街並みが一気に消えてなくなる。広がるのは果てしなく青い空と不毛の大地のみ。 僕らが通ったルートは中尼公路といい、中国とネパール(尼)を結ぶ大幹線道路…のはずなのだが… 僕は持っていたガイドブックを開き、中尼ルートのページを探す。一部を除いて｢舗装道路｣と書いてあるのだが、今走っている道は山のすそ野のがけっぷち。とてもとても細い道。万が一、ハンドル操作をあやまったら、谷底に転落、昇天である。だが、さすがにチベット人の運転手、慣れたもので、曲がりくねったがけっぷちを巧妙に走り抜ける。 車窓から谷底を見下ろすと、ずっとずっと下に転落したトラックなどが無残な姿をさらしている。 でも、この道路、一応｢舗装｣された道路ということになっている。｢舗装｣された道路を、土ぼこりを巻き上げながら、僕らのランドクルーザーは走りつづける。
ランドクルーザーはひたすら山の上へ上へと向かってゆく。当然、ハンドル操作を誤れば、転落する深さは高くなるばかり。不安で不安でたまらない。前を見ても後ろを見ても、ずっとそんな道が続いている。今さら引き返してくれとも言えない。言えないし、言いたくない。この山を上りきれば、そこには｢風の峠｣が待っている。チベットを紹介する時、たいていは風の峠の写真が使われている。それほど有名なラサ郊外の観光名所なのだ。 そしてたどり着いた風の峠。そこにはルンタ、｢風の馬｣が風になびいていた。 それにしてもチベットの空はとてつもなく青い。上空にいけばいくほど青さを増す。不思議な空だ。
	その空の青に、色とりどりのルンタが鮮やかに映える。石を積み上げたオボという塚に突き立てられた、天空に伸びる柱がいくつもある。ルンタはそれらの間をつなぐロープに巻きつけられ、風を受けるたびに激しくはためく。この峠はカンパ・ラ。別名を｢風の峠｣という通り、風が途絶えることはない。 空には雲がほとんどない。太陽の光が目を突き刺す。サングラスをかけているのだが、それでも空は青く、強烈な日差しが瞳を焼く。 左の写真はTIBET2000 Indexで使っていたのと同じ写真だが、風の峠の写真ではもっとも気に入っているものなので、再掲しておく。 写真を見た限りでは美しいのだが、実はこの周辺、しなびたルンタが地面に散らばり、お世辞にも｢美しい景観｣とは言えない。だが、空はやはり美しい。

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