空港に降り立つ。空気がやけに軽く、澄んでいる。空はとても青いのだが、何よりも日差しが強烈だ。日本から持っていったサングラスをおもむろにかける。標高3600ｍ。ちなみに富士山で3776ｍ。酸素が薄いので、少しクラッとくる。

そしておそらくこの旅の最大の難関とも言える入国審査が待っている。チベットには最低5人以上のパッケージツアーでないと入れない。だから僕も一応、カタチだけの｢ツアー｣に参加しているのだが、不安は消えない。かりそめの道連れたちは日本人2人、オランダ人3人、アメリカ人1人の計6人。書類上の要件をすべて満たしているはずの僕らのグループが、ここまで来て追い返されることなど考えられないし、考えたくもないが、一応、その6人で入念に｢打ち合わせ｣を行い、ラッシュ時の満員電車のようになっている入国審査カウンターをなんとかくぐり抜けた。

だが、やっかいなことに、同行の日本人はプロ仕様（？）のカメラを持っていた。チベットに報道関係者、カメラマン、僧侶は入れない。空港内で何度も公安に呼び止められ、ビザをチェックされる。小一時間ほど無駄にしたかもしれない。ビザなんて真面目に申請するわけないだろ、と思いつつ、背筋に冷や汗が流れる。

ようやくチベットの大地を踏んだ。夢見心地なのは酸素が薄いせいだろうか。