another side of TIBET2000 No.42 220m! |
Oさんはそれまでしきりと時計に付いている高度計を気にしていた。 いちいちうるせーよ。 だが、Oさんの時計の高度計では5000メートルまでしか計測できない。クライマックスになるはずのロンボクやチョモランマ・ベース・キャンプは5000メートル超。これから向かう場所だ。Oさんも「この時計で高度をはかれるのも今のうちか」などと名残惜しそう。 次の目的地、ラオ・ティンリー(シェーカル)まではアップダウンの激しい道が続く。途中、僕らは「海抜5220メートル」と書かれた石板を見つけた。 …「べい」=「米」=「メートル」… 「Oさん、『べい』じゃなくて『メートル』…」 ユーモア…だったのか? ユーモア… 僕は想像した。 絶対に読めなかっただけだ。「5220米」と書いてあるのを見て、Oさん、アメリカの領土だと思ったんだろうな。 中国ではアメリカのことを「美国」と書くのだが、そんなことOさんが知ってるはずない。Oさんにとって「U.S.A」は「うさ」なのである。日本で書く「米国」の「米」をアメリカのことだと知っているかどうかも疑問だが、アメリカの領土だと思って首をかしげてたのなら、Oさんの行動としては納得がいく。 「それにしても、なんで5220メートルなんだろう?」 …じゃ、「べい」って読んだのは本当にユーモアだったんだ… ユーモアって何なんだろう? 人が生きる上で必要なものなのだろうか? そもそも「生きる」とはどういうことなのだろう? 人はどこから来てどこへ行くんだろう? 神様って本当にいるのかな… なんとも深遠な問い掛けではないか。 「5220メートルだからでしょう」 だからさぁ、アップダウンが激しいから、5220メートルだって途中に通過するでしょ。俺も知らなかったけど、現実に目の前に「5220メートル」って書いてあるんだから、5220メートルなんでしょ。 「でも、俺の高度計、5000メートルのところを指してるよ」 !! もしかして、それもユーモア? 「高度計が5000を指してるってことは、ここは5220メートルじゃなくて、やっぱ5000メートルってことだよな」 「だって、ヘンだもんな。ベースキャンプみたいな高い場所で5200メートルなのに、ここで5220なんてこと、ありえないよな」 「ベースキャンプで5200メートルなんだから、わずか20メートルでも高かったら、 おい! おい! 今のは本気だろ! ベースキャンプってのは、「そこを拠点にチョモランマの頂上を目指す場所」なわけで、そこがチョモランマの頂上じゃないの! チョモランマは8000メートル級だから、まだ3000メートル近くも高いの! Oさんは続ける。 あのさぁ、確かに中国って誇大表現を使うけどさぁ、もしこの峠が「白髪三千帖」で大げさに書いてて、Oさんの高度計が正しかったとしたら、なんで誇大表現の幅が 機械に頼りすぎるのはやめましょう。バカになる。 |
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